会長からのメッセージ

 

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 医療法人社団 崎陽会 日の出ヶ丘病院 会長 大蔵 葉子

 

― 昭和60年に前理事長であったお母様の急逝をきっかけに理事長に就かれたとお聞きしました。
   
はい、そうです。それまでは普通の主婦でした。
ずっと音楽をやっていて、病院には興味がなかったというか、病院で働くなんて考えたこともありませんでした。でも、性格でしょうか、「やると決めたらやってやろう」、「ここにいるみんながニコニコして幸せになれるような病院にしよう」と決心しました。職員が暗い顔をしていたら患者様も暗くなってしまいますからね。
そして、今まで感じていた病院に対する疑問を解決していこうと思いました。

― 疑問というのは?
   
どんな業界でもそうだと思いますが、その業界では常識でも周囲から見ると非常識に見えるということはよくあると思います。病院でも同じで、この仕事に携わる前に病院に対して感じていた大きな疑問が一つありました。それは「なぜ患者様が頭を下げて、医者はあんなに偉そうにしているのだろう・・・」というものです。普通の感覚で考えるとこれは逆です。
この普通の発想が病院には抜け落ちていると感じていました。 これを解決するために「患者様の立場に立って、思いやりの心を持つ」というサービス業の発想で日々の業務改善を実践していこうと思いました。
今では当たり前のことですが、私が理事長に就任した25年前にこのような発想で仕事をしている病院は少なかったのが現実です。

― 当時のことを振り返るとご苦労も多かったのではないでしょうか?
   

人と人との関わりですから、簡単にいかないのは当然です。

今だから話せる話ですが、当時こんなことがありました。
お風呂は、限られた時間の中で多くの患者様に入っていただく必要があり、バタバタとします。そこで、少しでも時間を短縮するために、患者様にすぐに服を脱いでいただける状態になっていただき、廊下で数人並んで待っていただいているという光景がありました。
効率を優先させてしまい、思いやりの心が足りていなかった一つの例でした。
看護師の側から見れば、理解はできます。当時から看護師の仕事は激務で、限られた時間の中で多くの患者様に相対するわけですから、どうしても効率を優先させてしまうのです。
当時の看護師も心の中ではおかしいと思いながらも、激務の中でこのような対応をとっていました。
でも、ここで工夫が必要なのです。その工夫を生む源泉が考え方です。

「患者様の立場に自分が立つとどう思うか?」
「もし患者様が自分の家族でも同じ対応をするか?」

私たちは、サービス業です。時間や効率といったものは重要ですが、一番になってしまってはいけないのです。
一番は患者様です。そして、患者様の立場に立って考えることが大切なのです。
この時は、並んで頂く人数を少なくてもいいオペレーションを考え、待ちスペースにカーテンを設置するという対策をとりました。
このように全て現場で感じながら、見ながら、聞きながら、考えながら、やってみながら職員と一緒に解決していくという毎日でした。当時のことを大変だったのではないですかと聞かれることはありますが、大変だと思ったことはないですね。
職員みんなに教えてもらいないがら、職員みんなと一緒に一つずつ解決していくというすごく刺激的な毎日でした。

―会長普段から職員に伝えていることはありますか?
   
理事長になってすぐに職員全員をロビーに集めて言ったことが2つありました
その2つは先の話とも通じる話で、今でも言い続けていることであり、私の病院会長としての信念でもあります。
 
「人に会った時に日の出ヶ丘病院に勤めていると胸を張って言えますか」
「家族が病気になった時にこの病院に入院させ、この病院の先生に診てもらいたいですか」

この質問にYesと即答できる病院になる。これが私と職員が目指している病院の姿です。

―デイケアなど他の施設がありますね。
   
日の出ヶ丘病院では、「地域と共に生き、信頼される医療の提供」という基本理念を掲げています。 「地域の人に支えられない病院は病院ではない。信頼されない病院は病院ではない。」という思いから、この基本理念を掲げています。
現在の「ケアセンターおちあい」に以前あったクリニックは、地域の皆様のお役に立ちたいという一心で作りました。
その後、在宅看護などの新しい医療サービスも始めていますが、全て地域の皆様にどうしたらお役に立てるかを考えて形にしていったものです。

― ホスピスはなぜ始められたのですか?
   
夫を50代という若さで亡くした無念の気持ちから始まります。
夫を亡くした後に「何か自分ができたことがあったのではないか。」
「うちの病院ではどうしているのか。」
このことを自問自答する毎日でした。
その後、別の用事で東京都庁に行った時に担当の方からホスピスのことを聞きました。
そこで聞くまでは、ホスピスのホの字も知らないような状態でしたが、ホスピスの精神が自分の経験と合致して、その場ですぐにやりますと即答しました。
私が急にそんなことを言うものだから、職員達は大慌てでしたが、右往左往しながら形にしていってくれました。
改築のタイミングでもあったので、理事長室を潰してホスピス病棟の一部にしてもらいました。

― 今後、目指していることはありますでしょうか?
   
日の出ヶ丘病院は、療養生活をenjoyできる病院を目指しています。
療養生活は苦しいものです。痛いことを痛くなくすことは簡単にはできません。
でも、一時でも痛みを忘れることはできると思っています。
そのための環境づくりに取り組んでいます。 「食事がおいしい」「音楽を聴いて癒される」「楽しく話を聞いてくれる」など、心が満たされることで、一時でも、少しでも療養生活をenjoyしていただく。
これを実現するために、病院内外の様々な方の助けを得て取り組んでいます。

 

インタビュアー:株式会社モノサス 龍田祥拡